2016年6月29日水曜日

プレゼンテーションについて思うこと(4)~若き循環器医へ~

今日はスライドの構成についてお話します。

学会発表と、教育講演と分けて考える必要があります。

学会発表のためのスライドは、講演内容がそのまま論文のintroduction, methods, resultsになるようにすべきです。2度手間にならないように、その内容が論文になるように構成するのがいいでしょう。学会発表では、私達はセールスマンです。reviewerになってくれそうな先生たちに対して、ライバルたちに対して、新しい発表に関係した薬剤やツールをもっているカンパニーに対して、資金援助してくれそうなサード・パーティーに自分の発表を売り込むための、絶好のステージです。自分の発表をキラキラに見せるように磨いていかないといけません。

教育講演では、わざわざお金と時間を費やして聞いていただいている聴衆に何かを持っていっていただかないといけません。基本はgive, give, giveの精神が必要となります。

では、introductionあるいはbackgroundsについて考えていきましょう。

論文を書くとき、introductionは3つのパートに均等に分けられます。初めの1/3は一般的な研究の内容、いわゆる背景になります。真ん中の1/3は読者に対するアピール、すなわち今まで何がわかっていて、何がわかっていないかを書くことが重要です。最後の1/3は査読者に対するアピール、すなわちどのようなmethodsやどのようなアプローチがこの研究で目新しくて、論文になる価値があるのかを述べます。

学会発表も、そのまま論文になるため、その手順に従ってスライドを作れば、論文を書くときの手間が省けるでしょう。

教育講演では、聴衆の注意を引かないといけないので、introductionの最後には、聴衆に寄り添っていないといけません。対象が研究者か、臨床医かによって、方法は異なります。研究者にとっては、遺伝子を扱っていいる先生であれば、遺伝子の話をintroductionで述べれば、聴衆に寄り添っていることになりますが、臨床医にはちんぷんかんぷんとなるかもしれません。Targetingが必要です。

2016年6月28日火曜日

プレゼンテーションについて思うこと(3)~若き循環器医へ~


スライドの原則を挙げます。繰り返しになりますが、あくまで僕の方法で絶対ではありません。

1. スライドの色を統一させる

  背景のスライドの色がバラバラだと思考が中断します。そのわずかなロスがもったいないです。間に合わない場合は仕方ありませんが、自分でひとつひとつそろえるか、白の背景にするとそろえやすいかもしれませんが、高齢者が多いとまぶしくて細かい字が読めません。対象を考えることも重要です。

 チームでスライドの背景を統一していくと、使いまわしができます。

 

2. フォントを統一する

 論文とスライドでは見やすさがfontにより異なります。欧米人は論文では鍵のつくTimes New Romanが読みやすいのですが、スライドではarialのような鍵のないfontの方が読みやすいそうです。日本人でも、紙ベースなら細明朝体のような文字が、スライドではゴシックが読みやすいと思うのですが、これは好みによるかもしれません。スライド毎にフォントが違うと、もらったスライドだなと僕は評価します。

 
3. 1スライド、1メッセージにするため、余分な情報は削除する

 スライドで説明しない表記はすべて削除する。特に、自分のデータでない場合は必要です。こうすることで、言いたいことが強調されますし、たくさんのスライドが提示できます。

4. ギラギラした配色を使わない

 これも好みによるかもしれませんが、強い色が多いと、主張が強すぎて、思考が切れる気がします。

5. 表は極力使わない

 目で追える情報は鍵られているので、図に作り直す方が、目で読む時間を短縮でき、話を聞いていただける時間が増えると思います。

 スライドを作るときにどれだけ準備するかで、講演の質が代わると思います。

2016年6月26日日曜日

プレゼンテーションについて思うこと(2)~若き循環器医へ~

今回から、スライドの構成に関して話していきましょう。
内容はみなさんの先輩方がご存知だと思いますので、原則をお話しします。

キーワードはいかに聴衆の注意・思考を切断しないかということだと思います。そのために、注意している点は3点です。

1. 初めに時間を述べる

 学会のように時間が決まっていて、みんながそれを把握している場合は別ですが、ざっくりとしたプログラムで開始時間も聴衆の入りでずれることもあります。「今日は、心不全について約45分話させていただきます。」というと、何時に終わるか心構えを持っていただけます。こんな話後30分も聞けないやと思った方に、帰るという選択肢を与えることもできます。時間は一番貴重なものですから、むやみに奪うことはできません。また、そういうことで、自分の覚悟も決まります。45分しか話せないんだと。

2. Mapを渡す

 どのような話になっていくか、どきどきさせるのも上級テクニックですが、聴衆に安心していただくためには、どのような順番で話が進み、今どこなのかわかるように、適宜Mapを提示し、現在地を示します。こんな話後半分も聞けないやと思った方に、帰るという選択肢を与えることもできます。繰り返しになりますが、時間は一番貴重なものですから、むやみに奪うことはできません。また、自分のトークの進行状態の確認にもなります。

3. 講演自体が一問一答である

 講演自体が一問一答であり、そこにたど着くための物語と僕は考えています。ですので、タイトルと最後のスライドをくっつけると、一問一答になるようにしています。

プレゼンテーションについて思うこと(1)~若き循環器医へ~

年間100本以上の医師向けの講演を行っており、開業して7年で800本の講演を行っています。

僕の講演スタイルは独特で、30分の講演で60枚、50分の講演でスライド120枚使います。Web講演や英語での講演では、30分で50枚スライドを使います。早口ですので、わかりにくいとよく叱責されますが、プレゼンテーションの仕方についてよく若い医師から尋ねられます。

僕はプレゼンテーションは留学先の恩師Bill Little先生から教わりました。そして、心不全のフィールドでの戦友である猪又先生から、「大西先生、プレゼンテーションなめてる。」と、注意を受けて、また恩人である大手教授から、「論文を書くだけではなく、プレゼンテーションしなくては生き残れない。」と諭されて、プレゼンテーションについて思考し、自分のスタイルを確立しました。

正しいかどうか、また役に立つかどうかわかりませんが、参考になればと思います。

まづ初めに、プレゼンテーションとは何かということから、考えていきたいと思います。

プレゼンテーションとは、自分の哲学に基づいて再構築された情報を、いかに責任をもって聴衆に伝えるかということだと思います。最近は、昔と違って、ほとんどの情報がネットで簡単に取れます。わざわざ来ていただいている聴衆の時間は無料ではありません。貴重な時間を奪う権利はありません。来ていただいた聴衆を満足させるためには、十分な準備が必要です。ひとり予演会をせずに、話すことはありません。自分の話しやすい言葉と、書かれた言葉とは違うので、必ず事前に練習が必要です。直前にスライドを作っても話せますが、事前にひとり予演会とう準備をルーチンでしておいたほうが、よりよいパフォーマンスがでる場合が多いです。大学院生達には、原則発表2日前までのスライドの完成を義務付けていました。

では、プレゼンテーションで最も重要なことはなんでしょうか?

それは、時間を守ることです。8時半までと聞いていたからきたのに、押してしまって後半が聞けなかったという聴衆がいるかもしれません。時間が押しているのを見ると、準備不足だなという評価を演者に僕はします。

大きな会になればなるほど、時間厳守は重要です。入念に準備はしましょう。

新書

久しぶりにブログ更新です。

心臓の病気には大きく分けて3つあります。車でたとえると、エンジンの調子が悪い状態
(心不全)、ガソリンがエンジンにちゃんと届かない状態(狭心症、心筋梗塞)、電気系統の異常(不整脈)の3つです。

心不全の原因にもいろいろありますが、これも大きく分けて3つあります。心筋梗塞で心臓の細胞がつぶれてしまいうまく動かない状態(虚血性心疾患)、心臓の4つの部屋を区別するドアの壊れた状態(弁膜症)、そして生まれつき心臓の細胞がうまく働かない状態(心筋症)です。

最近は、弁膜症による心不全は減ってきていますが、心臓の出口のドアが調子が悪い大動脈弁狭窄症は増えています。今回、これについての新書を刊行しました。


研修医や一般内科の医療関係者向けの本ですが、ご興味がある方は医学書扱いのある書店や、amazonなどネットで購入可能です。